2023年7月8日。母校・杉並区立松溪中学校の創立75周年記念で、同期のベーシスト鈴木良雄君のTHE NEW BLEND の演奏会があった。 メンバーは、峰厚介(sax)、中村恵介(tp)、北島佳乃子(p)、小松伸之(ds) 、鈴木良雄(bs)の5人のクインテット。 演奏曲はすべて鈴木良雄のオリジナル曲。(当日プログラムは最後尾の資料編を参照。)
最初の曲 Morning Glow は、日の出前の朝焼け。
良雄君が、”白みがかった夜空から陽が差してくる有様の情景描写です”、と語ってから演奏が始まった。 静かなピアノソロから始まり、時が刻まれていき、サックスが日の出を告げ、ベースとドラムが鼓動を開始する。 トランペットの旋律が流れ、ベースがメロディーを支えていく。 最近聴いてる CD(Five Dance)の冒頭の曲なのだけど、アリーナの広い空間で聴くと別のようだ。 やはり空気感が違う。ライブはいい。
このユニット The Blendは、コロナ禍ごろ編成された個性派メンバーで、私はまだ聴いたことは無かった。 松溪中の公演では、スケジュールが合わずピアノとドラムが別人になり、The New Blend と称した。 ピアノ、ドラムは良雄君が選んだだけあって 二人とも実に素晴らしかった。
2曲目は 軽やかなリズムで始まる さあ太陽のもとに歩こう(Let’s Walk Towards the Sun) ベースの低音が終始 歩みを支えてくれる。 ピアノ、ベース、ドラムでウォーキング気分だ。 途中のベースソロは軽やかで気持ちいい。いい音でうっとりする。 中村恵介のトランペットが軽やかさを引き継いで歌ってくれる。 ドラムのソロも歩みを強めてくれる。 そう 太陽へ向かって歩こう、だ。
私は松溪中11期生でベーシスト鈴木良雄君とは同期だ。 彼はジャズの世界では 「チンさん」と呼ばれて敬愛されている重鎮だ。 松溪中同期の女性たちからは、”チンタラしてるからこんな名前つけられたんでしょ”、と評判が悪い(笑)。 そのCHINは、中国名の陳さんみたい、と云ったら中国名のチンは最後に ing が付き、全く違うと訂正された。 ニューヨーク時代に付けられたチンは、顔のカタチからあごのチンじゃないかと私は思っている。 ここではヨシオと書く。
ヨシオの音楽は素晴らしい。 The Blend編成前の、19年間続いた 鈴木良雄 Bass Talk をよく聴きに行った。 吉祥寺のSometimeが近くて、雰囲気が良く、食事も美味しいのでメインで通った。 Bass Talkは、野力奏一のピアノ、井上信平のフルート、岡部洋一のパーカッションに ヨシオのベースで、パンフの謳い文句は「ベテランのミュージシャンがかもし出す、極上の大人のJAZZ」でまさにそうだった。 Bass Talk が奏でるヨシオの音楽は 聴き手を感動させる。 休憩をはさんだ2部構成のライブの熱気が終わると、興奮が覚めやらない。 照明が明るくなって気づくと、感動で涙ぐむ女性が多い。
ジャズシンガーの鈴木那生さんと、彼女の追っかけの友人と三人で、Sometimeに Bass Talk のライブを聴きに行ったことがある。 鈴木那生さんは感動でうるうるだった。 彼女からメールが来た。”..改めて 音に人柄が表れることを痛感致しました。力強くても 優しい音に癒されました。”と。 ヨシオを筆頭に 皆 いい音を出す。またヨシオの作曲するJAZZは心の底に何かを感動させる要素がある独特の音楽と思う。
”コレ宇田川君だろ?”、と同期の武内重親君から、この時の写真が送られてきて吃驚した。 その日の公演を、ピアノの後ろ席の誰かが撮影し、FaceBookに載せ、その写真の端っこに頬づえしてる私が居た。 左隣は鈴木那生さん。その隣は追っかけの私の友人。こんな偶然があるのが面白い。
ヨシオが作曲家であることはジャズファン周知のことだ。NYC時代にクラッシックの作曲方法を勉強している。 けど、自分のユニット用以外に、頼まれて作曲してることは知られていないだろう。 私が沖縄好きと知って、彼は「沖縄の三線の曲を、美ら海水族館用に作曲し、知名定男さんが演奏した。」と話してくれて、 「美ら海の入ってるCDは廃盤だけど、見本盤があったので送る」、と送ってきた。
忘れられない公演がある。
2010年02月 紀尾井ホールでの、『ベーシスト鈴木良雄と4人のジャズピアニスト(秋吉敏子、イサオ ササキ、野力奏一、山本剛:参考1)』だ。 レベルの高い最高の演奏だった。ピアノが歌い、ベースが歌い、ピアノはベースの力に支えられて更に奥行きが深くなっていった。 ヨシオの力量の凄さに驚き、感激した。
このとき、美智子皇后さまがお忍びで来られ、終わって楽屋で、秋吉敏子・ヨシオと歓談された。 皇后さまはベースを弾くヨシオの指に興味を覚えられ、その指に触られた、と。 これを機にヨシオのファンになられたようで、その後日談もあるのだが 公表は控える。 飲み会で、ヨシオの両手の小指を見せられたことがある。左は右の倍くらいの太さで驚いた。
参考1:鈴木良雄+山本剛
「ラヴィング・タッチ」https://www.youtube.com/watch?v=Kmz3lA73Dms
「ブルース・フォー・エディス」https://www.youtube.com/watch?v=6CO17TjRDaU
私は中村恵介のトランペットの音色が好きだ。
関係者なので「同窓会」の腕章を巻いて、当日はアリーナ後方の出口わきに、壁を背に立って聴いていた。 中村恵介は舞台上から私めがけて、吹いてくる。広い空間のなかをのびのびと吹いてくる。 力を入れると、その熱気が怒涛のように私に襲いかかってくる。素晴らしい経験だった。
大昔、マイルス・デイビスを大阪公演で聴いたことがある。(そのアルバムが「パンゲアの刻印」) 一番安いチケットのため、壁を背にした最後尾席だった。音量が凄まじく、彼のトランペットの音が壁に反響し最悪だった。 中村恵介の音色はどう吹いても日本的で気持ちよい。
3曲目 Wings、4曲目 Shinjuku(新宿) が終わって休憩に入った。 招待したスポーツクラブの友人二人の席へ行ったら、ヨシオファンのTさんは目をうるうるさせていた。 昔からのヨシオの大ファンで、シークレット・ライブ(スタインウェイが2台あるタワーマンションの調律師の部屋でのライブ)にも参加していた。 (アリーナでのライブが終わって、挨拶したいとで彼女を舞台に連れて行った。ヨシオに喜ばれた。)
第2部は、吹奏楽部との共演だった。
吹奏楽曲「宝島」で、峰厚介(sax)と中村恵介(tp)は、舞台下の生徒たちの間に降りて行って演奏した。峰さんは、リハーサル時と打って変わって、大きく素晴らしい音を出すので、さすがプロと感嘆した。 ヨシオも『吹奏楽部の後輩達との共演も、楽しく嬉しくて思わずほくそ笑んでしまいました。 音楽やっていて良かった、と思えた瞬間でした。』と、私のFBの記事にコメントしてくれた。
実は、生徒たちとの共演は、リハーサルが大変だった。 メンバーのスケジュールを合わせて松溪中に行き、吹奏楽部の部活でリハーサルするのは簡単では無かった。 せっかく調整がついた6月6日のリハーサルが、台風2号の影響で3日(土)の運動会が中止で6日の予備日に移った為に、流れてしまった。 このときは、彼も私も どうなることかと とても焦った。 やっと16日(金)の放課後(16:00~18:00)に4名参集の調整がつき、生徒たちとのリハーサルが行われ、ホットした。 (このリハで生徒たちの課題などがチェックされ、演奏会当日、公演直前に最終リハが行われ、本番に臨みました。)
一方的な 聴かせるための演奏だけでなく、生徒との共演は画期的で、生徒・学校に強烈な印象を残したことと思われます。
第3部 梶原まり子 ジャズ・ボーカル。
彼女が松溪中の後輩であることはヨシオに聞いて驚きました。
女性ボーカルが入って雰囲気が変わり 、よりフレンドリーになりました。
第4部 鈴木良雄さん、梶原まり子さん への質問 と親切な回答も良かった。
これで全プログラム終了だが、私は肝心なことを忘れていた。 ヨシオとの事前打ち合わせで、アンコール! を大きく叫んで アンコール演奏の口火を切ることになっていたが、 終了したことに感動して、それをすっかり失念していた。
と、その時、横で ”ブラボー”との大きな発声があり、会場がブラボー、アンコールで沸き立った。 一緒にこの会を準備していた10期生の小林眞人さんだった。
後日 、眞人さんからメールがあった。 『.. 本当に素晴らしいコンサートでしたね。ジャズの生演奏は、初めてです。いやー感動しました。 元々地声が小さいので迫力ある「ブラボー」とはなりませんでしたが、思わず叫びました。 それにしても鈴木さんのベース、圧倒されました。リズム感がさすがです。 クラシックを聴いていてもそれほど身体は動かないのに、今度ばかりは震えました。 11期生の底力、半端ないですね。..』
褒められ、ふふふ と嬉しかった。
11期生 宇田川東
<資料>
(1)プログラム
第1部 鈴木良雄 THE NEW BLEND 演奏
1. Morning Glow
2. Let’s Walk Towards the Sun
3. Wings
4. Shinjuku(新宿) いずれも鈴木良雄さんのオリジナル作曲です
第2部 吹奏楽部との協演
吹奏楽曲 「宝島」
第3部 梶原まり子 ジャズ・ボーカル
1. Fly me to the moon 北島佳乃子(p)、鈴木良雄(b)、小松伸之(ds)
2. Teach me tonight 北島佳乃子(p)、鈴木良雄(b)、小松伸之(ds) 、峰厚介(sax)
第4部 鈴木良雄さん、梶原まり子さん への質問
(2)著作「人生が変わる55のジャズ名盤入門」
鈴木良雄 竹書房新書 2016年2月11日発行。彼曰く、たぶん、音楽評論家が書い
てない 初めてのジャズ・アルバムの入門書、と。
寄稿 宇田川 東さん(11期) 創立75周年祝賀ジャズコンサート 観聴記
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